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第三章 真意 後篇 38

「それ以上喋るんじゃねぇ! このくそったれがぁあああっ!!」


そして、村上は渾身の力を込め、光永の顔面目掛けて勢いよく右の拳を振り下ろした。


しかしその瞬間、光永は左腕で村上の右拳を左斜め上へ受け流しながら、左手で彼の右袖、右手で村上の左襟を掴み、柔道の大外刈のように右脚で彼の右脚を刈りながら、勢いよく村上を投げ飛ばした。


村上が背中から地面に叩きつけられると、光永はすかさず仰向けに倒れた彼の体の上にのし掛かり、同じく柔道の袈裟固めのような体勢で、村上の体を地面に押さえ込む。


「最後まで往生際の悪い奴だな。今さらもがいたところで、状況が覆ることは無い。無駄な抵抗はやめて、さっさと覚悟を決めるんだな」


「くっ……ううっ……」


村上は顔をしかめながら力を振り絞り、何とか光永の押さえ込みから脱出しようともがいていた。


しかし、どれだけ力を振り絞っても光永の体は微動だにせず、巨大な漬物石の如く村上の体に重くのし掛かり続ける。


やがて、村上は力尽きて抵抗を止めると、疲労困憊な様子で息を切らしながら上空を見上げた。


「……わかった、もういい……あとはお前らの勝手にしやがれ、クズ共が……」


そう言いながら村上が見上げる漆黒の夜空には、月明かりで地上を照らし出す満月と共に、大小様々な無数の星々が輝いていた。
 

第三章 真意 後篇 37

「あの少女だ。我々のこれまでの調査によれば、あの少女は松浦達を襲撃した張本人だ。実行犯である彼女なら、松浦達がどこへ拉致されたか知っているだろう。ちょうど我々は、別件であの少女を探していたのでな、見つけ次第彼女を保護する予定でいた。もし、どうしてもお前が口を割らないと言うのであれば、彼女の口から真相を聞かせてもらおう」


「な、なんだと……?」


村上が険しい表情を浮かべながら額に冷や汗を滲ませると、光永は再び鋭い眼差しを彼に向けた。


「さあ、どうする? 喋る気になったか?」


光永がそう聞くと、村上は舌打ちしながら険しい表情を浮かべる。


「チッ、きたねぇ真似しやがって……」


「汚い? 海賊崩れのお前に言われる筋合いは無いな。お前は松浦義忠と他3人を少女1人に襲撃させ、自分の手を汚すこと無く松浦商会を手に入れようと目論んだ。だが、結局は飼い犬に手を噛まれ、今こうして散々に叩きのめされた挙げ句、今度は自分達が壊滅の危機に瀕している」


そう言いながら光永は、軽蔑を込めた冷徹な眼差しを村上に向ける。


「実に愚かだな。お前のような馬鹿には、ふさわしい末路だ」


「なんだと、この野郎……」


すると、額やこめかみに血管の筋が浮き出る程頭に血が上った村上は、左手で光永の胸倉を掴み上げ、鬼のような形相を浮かべて激昂しながら、右の拳を振り上げた。
 

第三章 真意 後篇 36

すると、気を失って倒れていた村上は目を覚まし、顔をしかめながらゆっくりと上体を起こした。


「いってててて……くそっ、あのアマ……」


鼻血を手で拭いながら村上がそう毒づくと、彼の目の前に現れた光永はルフォーショー・ポケット・リボルバーを懐に仕舞い込みながら、鋭い眼差しを浮かべて村上を見下ろした。


「村上久だな? 松浦義忠他、計4名の行方について話がある。詳しく聞かせてもらおう」


光永が淡々とした口調でそう言うと、村上は地面に座り込んだまま彼を睨み返す。


「あ? なんだ、お前? いったい、なんの話だ?」


「とぼけるな。お前達と松浦商会の間で何があったかは、大体聞いている。お前はあの少女を雇って松浦商会の倉庫を襲撃し、松浦達4名を拉致した。加えて、昨日の夜も松浦の部下達を襲撃し、不当な手段を持ってして、松浦商会を自らの傘下に収めようとした。言い逃れは出来んぞ。関係者から証言も取ってあるからな」


「証言だと……?」


村上は眉をひそめてそう答えると、やがて口元に不敵な笑みを浮かべ、その場から立ち上がった。


「ハッ! さてはお前、松浦商会に雇われて俺を脅しにきたな? だとしたら、残念だったな。悪いが俺は何も知らないし、お前と話してやる義理も無い。とっとと俺の前から消えな」


「まだシラを切るつもりか? 確かに、お前達村上商会が松浦達を拉致したという決定的な証拠は、これまで挙がってこなかった。だが、今なら話は別だ」


「あ? 何が言いたいんだ、お前は?」


村上が光永を睨み付けながらそう言うと、光永は義明と梨奈を尻目に見ながら、さらに言葉を続ける。
 

第三章 真意 後篇 35

しかし、やがて義明は口元に小さく笑みを浮かべると、真っ直ぐな眼差しで梨奈の目を見つめながら言葉を続けた。


「もちろん、明日からでも稽古を再開しよう。それに、私も君がいなくなってから、よく考えてみたんだ。本当に今までの私の指導が、梨奈のためになっていたのかどうか……もしかしたら、君の才能をもて余すような稽古をしていたんじゃないかってね……それで、私もようやく答えを出せたんだ。君の言う通り、ティーは型稽古だけじゃなく、対人稽古も必要なのかもしれない」


義明がそう答えると、梨奈は涙を流しながらも驚き、ハッと目を見開いた。


義明は話を続ける。


「梨奈、私の方こそ君に適切な指導が出来ていなくて済まなかった。これからは、組手稽古の時間も増やしていこう。今の君でも、大の男をこれだけ相手に出来るんだ。もっと効果的な練習を積んで才能を磨いていけば、きっと君は今以上に強い武術家になれるはずだ。まずは、変手の稽古を増やしていくところから始めよう。今まで修業してきた型の意味を理解するためには、変手をやるのが一番だと私は思うんだが……どうだろう?」


「先生……!」


梨奈は義明の言葉を聞くと、嬉々とした表情を浮かべながら涙を拭い、やがて満面の笑みを見せた。


「ありがとうございます、先生!」


そんな中、男達を倒し終えた守優と守善、由佳、守央、世璋の5人も口元に笑みを浮かべ、やや離れた所から義明と梨奈の様子に目を向けていた。


一方、光永は砂浜を歩きながら、先程梨奈が村上の右手から弾き飛ばしたルフォーショー・ポケット・リボルバーを拾い上げた。
 

第三章 真意 後篇 34

その衝撃は地面にまで伝わり、白く細かい砂を巻き上げると同時に、村上の後頭部を通して砂浜を陥没させた。


やがて、海岸に静寂が戻ると、穏やかな海風が砂浜に吹き込んできた。


村上が率いていた男達は、義明や守優達の活躍によって全員倒され、砂浜の上で力尽きたまま体を横たえていた。


一方、梨奈が村上の顔面に突き立てた右拳を右脇まで引くと、彼女の足元に仰向けで倒れている村上も白目を剥き、気絶したまま動かなかった。


梨奈は残心したまま息を荒らげ、倒れたまま微動だにしない村上を見下ろしている。


すると、そこへ義明が駆け寄ってきた。


「梨奈!」


彼の声に気づいた梨奈も構えを解くと、安堵したような表情を浮かべて、義明に駆け寄る。


「先生!」


そして、梨奈と義明は互いを強く抱き締め合った。


抱擁を交わす中で、梨奈は涙を流しながら詫びの言葉を口にした。


「ごめんなさい、先生……勝手に家出したりして……私、先生に言われるまま型稽古ばかりしてるのが嫌だったんです……型なんか実戦じゃ役に立たない……それよりも組手をしないと、いつまでもたっても強くなれないんじゃないかって思ってて……でも、あの時先生が私に組手をさせなかった理由、やっとわかりました……実戦で強くなるために型稽古をすることが、どれだけ大事なことか……その大事な基礎を疎かにしてた私が、どれだけ未熟だったか……先生、本当にごめんなさい……これからは、ちゃんと型稽古頑張ります……だから、また先生にティーを習ってもいいですか……?」


「梨奈……」


義明は、彼の胸の中ですすり泣く梨奈の言葉を聞きながら、少々驚いたような表情を露にしていた。
 
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