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第三章 真意 後篇 16

「クックックッ、松浦商会はもう壊滅寸前だ。お前にも感謝してるぜ。もし、松浦商会を俺達の下に付けることが出来りゃあ、今までよりも縄張りが広がることになる。俺達の縄張りは常に他の奴等なにも狙われてるから、用心棒も増やさなきゃいけねぇなぁ。どうだ? 今回の働きを評価して、お前を俺達の正式な用心棒にしてやるってのは――」


「お断りします」


梨奈は窓の外に目を向けたまま、村上の言葉を遮るようにそう答えた。


村上は眉をひそめながら、突然の梨奈の返答に言葉を失っていたが、やがて口元に再び不気味な笑みを浮かべた。


「……何?」


村上がそう聞くと、梨奈は毅然とした態度で立ち上がり、ようやく村上の方を振り返った。


「急な話でごめんなさい。私、山川村に帰ります。今までお世話になりました」


「なっ……!?」


深々とお辞儀する梨奈の姿を見て、村上は驚きを隠せなかった。


同時に、村上の心の奥底からは、自らの期待を裏切られたことに対する怒りが沸々と沸き上がってくる。


「なん……だと……?」


「私、今までずっと悩んでたんです」


梨奈はそう言って頭を上げると、視線を下に落としたまま表情を曇らせ、話を続ける。


「練習の時、先生はいつも型しか教えてくれませんでした。本当は組手もやらないと、型稽古で覚えた技が身に付いてるかわからないのに、先生はいつも型と変手の稽古しかさせてくれない。でも、それじゃあ私が本当に強くなったかどうかわからない。数年間、ずっとティーの稽古を続けてきたのに、自分が強くなったかもわからないなんて、そんなのおかしいじゃないですか。でも、私がお願いしても、先生は組手の稽古をさせてくれない。だから家を飛び出して、私と戦ってくれる相手を探すことにしました。最初は辻でカキダミシをしてたけど、途中で宿代にしてたお金も無くなっちゃって、これから先どうしようかと思ってた時に、ここで住み込みの用心棒として働かせてもらえるようになって……おかげで、いろんな相手と戦うことが出来ました。でも昨日、偶然会ったあの武術家の男の子と戦ってわかりました」
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