FC2ブログ
 

第三章 真意 後篇 33

精神的に余裕が無い中、梨奈はこの状況を打開しようと、焦りながらも思考を巡らせる。


(どうしよう……このままじゃ、先生まで殺されちゃう。せめて、私が自由になれれば……でも、頭に銃を突きつけられた状況から反撃する技なんて知らないし、どうしたら……)


すると、梨奈が心の中でそう呟いた瞬間、彼女は突然昔の記憶を思い出し、ハッとした表情を浮かべた。


梨奈の脳裏を過ったのは、かつて義明から武術の型について教わった日の記憶だった。


在りし日の記憶の中、自宅の庭でティーを個人教授する義明は、ある型の動きを応用した技について、自ら動きを交えながら梨奈に説明していた。


(これは、五十四歩(ごじゅうしほ)という型の動きを応用した技だ。五十四歩は首里手の形の1つで、様々な技と体の使い方が内包されているが、中でも代表的な技の1つが、この羽交い締めに対する技だ。相手に後ろから羽交い締めにされたら、まず左手で相手の右手首を掴みながら、右手で相手の右の肩口を掴む。次に、相手の体を背負いながら、左手を引き込んで肩越しに相手を投げ飛ばす。他にも、この技の動きを応用すれば、羽交い締め以外のやり方で背後から拘束された時も、効果的に反撃が出来る。相手の腕を両手で掴みながら、素早く自分の体を捌くのが、この技の要点だ。両手の力だけじゃなく、体の力も上手く使うことで、力の強い相手に背後から取り押さえられても、簡単に脱出することが出来る。護身の術としてはとても実戦的な技だから、よく覚えておくように)


梨奈の記憶の中で、義明は穏やかな表情を浮かべながら、丁寧な口調でそう言っていた。


そんなかつての稽古の光景と義明の言葉を思い出した瞬間、梨奈はいつの間にか左手で村上の右手首を掴み、銃口を自らのこめかみから素早く逸らしながら、右手で村上の右肩口を掴んでいた。


彼女の突然の反撃に村上は対応出来ず、その体を前方に崩されながら、一瞬の間も無く梨奈に背負い上げられる。


「なっ……!」


すると、梨奈は両手を素早く懐に引き込み、柔道の一本背負い投げのような投げ技を繰り出して、村上の体を勢いよく宙に浮かせた。


梨奈の右肩越しに投げ飛ばされた村上は、背中から地面に叩きつけられ、彼女の足元に仰向けで倒れ込んだ。


「がはっ……!」


さらに、村上が顔をしかめると、梨奈はすかさず彼の右手からルフォーショー・ポケット・リボルバーを右手刀で弾き飛ばし、右脇に構え直した右拳を振り下ろさんとする。


「はあぁあああっ!!」


そして、梨奈が気合いと共に鋭い右正拳下段突きを放つと、豪速で放たれた彼女の右拳は村上の顔面のど真ん中にめり込んだ。
スポンサーサイト



 

comment form

管理者にだけ表示を許可する

comment

 
プロフィール

ジェド(jed)

Author:ジェド(jed)
ツイッター(@jed_restart)
https://twitter.com/jed_restart

オリジナルグッズ販売中!
https://jed-vin.booth.pm/

最新記事
最新コメント
カテゴリ
PR
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR