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第三章 真意 後篇 41

「まあ、逆を言えば民事紛争の和解あっせんも、当事者同士の話し合いが円滑に進んでくれるとは限らんからな。交渉が紛糾してしまえば、どれだけ当事者に裁量を認めたとしても、意味が無いということだ」


そう答えた光永は、手紙の内容に目を通しながらさらに言葉を続ける。


「……ふむ、なるほど。我々の理想とは少々違うようだが、一応解決に向けて前進はしているらしい。あの少女からの証言を元に我々が松浦達4人を発見した後、松浦商会と村上商会、少女の一家と長嶺殿が、弁護士を仲介して和解交渉を始めたそうだ。ただ、松浦商会と村上商会の間では、互いに損害賠償の金額を巡って交渉が難航……さらに、少女の一家と長嶺殿も、村上商会と少女の間に締結されている雇用契約の即刻解除を請求したそうだが、後任の用心棒が未決定であることを理由に村上がこれを拒否……最終的には、交渉決裂によって業を煮やした少女の一家と長嶺殿が警察に駆け込んだことで、一連の抗争が刑事事件として処理されることになったそうだ。現在、松浦や村上を含めた両商会の構成員達は、勾留されて取り調べを受けているらしい。罪の重さからしても、今後起訴されるのは確実のようだ」


光永がそう言うと、世璋は呆れた様子で再び口を開いた。


「なんだよ、結局お巡りの世話になってんのかよ……って言っても、あの海賊共は話し合いに応じるようなガラじゃ無さそうだし、とっとと裁判で有罪にされた方が良さそうだな。あの海賊共がムショにぶちこまれて、財産も根こそぎ没収されれば、松浦商会も村上商会も壊滅同然……これで、あの女流武術家や長嶺の旦那が報復されることも無いって訳だな」


すると、今度は守央がやや心配そうな様子で、光永に向かって疑問を呈した。


「ところで、長嶺さんの弟子はどうなったんですか? 村上商会の構成員が勾留されてるってことは、まさか彼女も……?」


「いや。あの少女は、警察の取り調べの中で一連の事件に関する情報を全て話した後、弁護士による情状酌量の請願や事情説明の介もあって、即日釈放されたそうだ。彼女が自首してきたことや未成年であること、真摯に反省を示していることや、保護者がいて再犯の可能性が低いことなどを理由に、違警罪即決の手続きが進められて、厳重注意を受けただけで済んだようだ。村上商会との雇用契約についても、勾留されている村上久の後を引き継いだ臨時代表と交渉し、合意までに数日程かかったものの無事解約出来たらしい」


「じゃあ、彼女はもう元の生活に……?」


「ああ。今頃はまた、ご両親や長嶺殿と共に、いつも通りの暮らしを送っているだろう」


光永はそう答えながら手紙を机の上に置くと、椅子に深く腰掛け直し、落ち着いた様子で背もたれに体を預けた。
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