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第一章 初戦 3

「脱清人ってやつか……まったく、懲りねぇ奴等だな」


「まあ、俺達は仕事が出来るだけましだろ?あいつらの中には、家族を養えない状況の奴だっているんだからな」


「そりゃそうだけどよ……でも、まさか脇地頭の与力(従者)だった俺達が、15年前の琉球処分の後に探偵になれるなんてな」


「俺達の元々の仕事は、牧志村の脇地頭だった牧志(まきし)親雲上(ペークミー)の身辺警護だったが、たまに領地で起こった問題の調査なんかもやらされてたからな。当時は王府の役人だった大筑(ウフチク)や筑佐事(チクサジ)が今でいう警察官みたいなもんだったが、奴らは王国全体で数百人程度しかいなかったから、万が一領地で何か問題が起こると俺達が最初の対応に入るしかなかった。その点を踏まえれば、正式な役人ですらなかった俺達が、牧志親雲上の計らいで今の探偵事務所に雇ってもらえたのはありがたいことだ。廃藩置県に伴う混乱で、食い扶持を失った士族や王族は大勢いる。もっとも、間切(まぎり)や村の地方役人(じかたやくにん)だった奴等は、明治政府の計らいで皆また役人に再任されたらしいけどな」


「王府に勤めてた役人の連中はどうなったんだ?」


「ほとんどが免職になったらしい。一部の連中は県庁や郡役所に再雇用されてるみたいだが、本土の連中が上層部でのさばってる以上、今までほど好き勝手は出来ないだろう。地頭職に就いてた上級士族達も旧王国時代は金に困ってたみたいだが、王府の解体で領地を取り上げられてからは、旧慣温存政策の一環で金禄を貰いながら悠々自適に暮らしてるんだとよ」


「羨ましいねぇ……俺ら筑登之親雲上(チクドゥンぺーチン)を含めた一般士族も手当金が多少出たとはいえ、貰えたのは1回ぽっきり……旧王国時代も無禄だったから、今でも金に余裕が無いことに変わりはねぇしな~」


「ああ、確かに世知辛い世の中だな……さて、世璋(せいしょう)。そろそろ行くか」


「おう」


守央と呼ばれた鉛色の上衣を着た男と、世璋と呼ばれた黄緑色の上衣を着た男は、ゆっくりと椅子から立ち上がった。


すると突然、茶屋の出入り口を閉じている引き戸の外から、陶器が割れるような音に続いて男と青年の激しい口論が聞こえてきた。


「いてぇな! 何しやがんだ!」


「何だと、てめぇ! ぶつかってきたのはそっちだろうが!」
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