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第二章 真意 前篇 15

「……1つだけ、心当たりがあります。梨奈がいなくなる前日のことでした。私がいつものように、自宅の庭で梨奈にティーの型を指導していた時に、彼女が組手を教えて欲しいと言ってきたのです。私は梨奈の申し出を断りました。彼女に組手を教えるのはまだ早いと思ったからです。それまでも、私が他の弟子達にティーを教える際は、例外無く型稽古を中心に指導していましたので、梨奈にも約束組手やイリクミをやらせたことはありませんでした。唯一、型稽古の応用として変手をやることはありましたが、それも練習頻度としてはほとんど無いに等しいです。確かに、型稽古ばかりでは退屈かもしれません。ですが、ティーを修業する上で型稽古は何よりも大切です。もちろん、組手の稽古をすることで具体的な技や戦術も学べば、より強くなることが出来ます。しかし、技や戦術を自分のものとするためには、まずは型の修練を通じて武術的な身体動作を自らの体に叩き込んでおく必要があります。それを先にしておかなければ、いくら技や戦術を学んだところで生兵法にしかなりません。私はそのことを梨奈に理解して欲しかったからこそ、彼女に組手を教えることを断ったのです。しかしながら、彼女がその時とても残念そうな顔をしていたのは覚えています。もしかしたら、梨奈は組手を教えず型しか教えない私の指導が嫌になって、家を出ていったのかもしれません。家にいれば、恐らく無理にでもご両親から私の指導を受けるよう言われるだろうと思いますから……」


義明はそう言いながら顔を俯かせ、さらに言葉を続ける。


「しかし、私は今一度会って彼女に真意を伝えたい。型稽古の大切さを、そして武術家として強くあるために心掛けなければならない精神を……それでもなお、彼女が私の指導を必要無いと言うのであれば、私はその時こそ彼女への未練を断ち切る所存です」


そして、義明が最後にそう言い終えると、守央と世璋は少々驚いたような表情を浮かべ、互いにさりげなく横目で視線を合わせた。
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